最優秀賞

平川さん

神戸三宮学習センター(2年生)

  「ありがとう」このたった五文字の中には、どれだけの思いが込められているのだろう。 私が普段多用している「ありがとう」には、本当に価値があったのだろうか。そんな、当たり前で大切なことをもう一度考え直すきっかけをくれた妹に、私は「ありがとう」を伝えたい。

私には二歳下の妹がいる。好きなファッションも感性も正反対だが、アニメだけは趣味が合う。ある日、私は入院している妹に絵をプレゼントした。妹の好きなアニメキャラクターの模写である。「食事はまずいし、毎日ひまだ。」と嘆いていた妹は、私の絵を見てとても喜んでくれた。そして何度も「ありがとう。めっちゃいい。」と言ってくれた。喜んでくれて、さらには笑顔になってくれて私は嬉しくなった。そしてふと思ったのだ。今、妹はどれほどの思いを込めて「ありがとう」と伝えてくれているのだろう、と。

妹に「ありがとう」と言われ、私の胸は熱くなった。それは、心がこもっていたからだと思う。上辺だけの言葉ではなく、心の底から思っている感謝を「ありがとう」に込めて伝えてくれたからこそ、私の心に響いたのだ。

 では、私はどうだろう。感謝の言葉は、普段からなるべく伝えるよう意識している。しかし「ありがとう」と言わなければ、ということにばかり気を取られ、中身のない言葉になってしまってはいないだろうか。思い返してみると、「ありがとう」と言ってはいるものの、なぜ礼を言ったのか自分でも思い出せないものが多くある。少し怖くなった。空っぽな「ありがとう」を言われた相手は、どんな気持ちになっただろう。嫌な気持ちにはならなかっただろうか。本当に大切なのはただ「ありがとう」と言うことではなく、心を込めて感謝を伝えることなのだと気づいた。

 それ以降、私は心を込めて「ありがとう」と伝えることを意識している。例えば物を落としてしまい、誰かに拾ってもらったとき。今までは口をついて出ていた「すみません」を「ありがとう」に変え、さらに感謝の気持ちも込めて伝える。しかしまだまだ人と接するのは苦手なため、稀に「すみません」と言ってしまったり、感謝の気持ちを込める前に、とっさに「ありがとう」と言ってしまうこともある。これからはそれを少しずつ減らしていき、いつでも感謝を込めて「ありがとう」と言えるよう頑張りたいと思う。

 父がいること、母がいること、妹と弟がいること。そして友人や先生がいること。たくさんの奇跡が重なってできた周りの環境が、私の日常としてそばにある喜び。どんなに小さなほころびにも幸せを感じて、「ありがとう」と伝えられる人に私はなりたい。

最後に私の妹へ。とても大切なことを気づかせてくれてありがとう。私の妹でいてくれて、一番の理解者でいてくれてありがとう。あなたのきらきらとした笑顔に、いつも元気づけられています。あなたの姉でいられることは、私の最高の誇りです。これまでの半生分の感謝と、一生分の好きを込めて伝えます。ありがとう。大好きです。